アッテネーター自作、計算関連まとめ。
先週の宣言通り、アッテネータ関連記事のまとめを書いていきます。本記事で自作できるようになるのは「π型アッテネータ」というものです。
※制作物に関する性能や、その結果に関していかなる責任も負いかねます。自己責任でお願いします。
もくじ
アッテネータの目的と役割についておさらい。
上図の様にアッテネータは「インピーダンスを変えずに電力を落とす」役割があります。もう一つの役割として実は「インピーダンスを調整する」(※1補足)という役割もありますが、とりあえず気にする必要はありません。
・アッテネータの役割
ではアッテネータの目的とは何でしょうか?。アッテネータは今回想定しているギターアンプ等に使用し、簡単にいえば「音色を変換せずに音圧を減らす」事が目的です。上図に従うとボリュームフルテンだと10Wの音が出る所をフルテンでも1Wまで音圧が減らせるので家庭で使いやすくなる。といった目的があります。(※2補足)
※1補足:電力伝送など「インピーダンスマッチング」が必要な回路(高周波等)では設計アッテネータのインピーダンスに補正する効果があります。
※2補足:アッテネータの目的は電力減衰なので補足1のような主に高周波回路の場合はアンプ後でなく前に入れたり、デバイス間に入れたりします。チップ抵抗を使えば5GHz程度までは使えると思います(基板材質にもよる)。
(ブラックェ・・・)
アッテネータの計算
アッテネータの定数計算を行いましょう。
上図はアッテネータの回路図です。アンプの出力とスピーカーの間に接続するのが定石です。R1aとR1bの定数は一緒にです。
上図が計算式です。まずいくつかの数値を集める必要がありますので、アンプの裏などのデータを調べましょう。
・調べる数値。
- スピーカーのインピーダンス(使用スピーカーによる)
- アンプの出力電力(使用アンプによる)
- 減衰量(自分で決める(家庭用なら出力1Wに調整がお勧め))
数値を確定させたら上図の計算式で各抵抗の定数を決めていきましょう。
例:出力電力が10W、インピーダンスが4Ωのギターアンプを減衰させて1Wにしたい時。
・減衰量10dB(減衰なので”-”) = 10Log( 1W / 10W )
・R1 = 7.6Ω = 4Ω × ( 10^(10dB/20) + 1 ) / ( 10^(10dB/20) -1 )
・R2 = 5.7Ω = 4Ω / 2 × ( ( 10^(10dB/20))^2 - 1) / 10^(10dB/20)
実際の抵抗の値は計算通りにならないので近い値を選びます。
・定数を計算したら電力に耐えられるか確認する。
定数決定したら早速作ろうと思いがちですが、アッテネータはかなりの電力がかかり例えば上記の例では出力電力10Wを1Wまで落としていますので10W-1Wで9Wがアッテネータ全体に掛かります。各抵抗に掛かる電力はそれぞれオームの法則で計算できますので頑張って計算しましょう。もし面倒くさい場合は最低でも減衰量電力×2の耐圧を持った抵抗を各部に使ってください(例題で言えば9×2=18W)。もしくは抵抗の並列及び直列接続で耐圧を上げても良いです。もしギリギリなモノを使っていたら最悪家が燃えます。余裕を持って2倍の耐圧をもたせる事がセオリーです。
参考部品
・メタルクラッド抵抗
大電力に耐えられるように最初から作ってあるため、耐圧さえ問題なければこのメタルクラッド抵抗を3つ購入するだけでアッテネータが完成します。便利。ただし、シャシーやヒートシンク等に取り付けしないと耐圧は半分で考える必要がある。また、巻線抵抗の一種のためコイル成分による高域の減衰の可能性がある(極端なオーディオマニアで無い限り気にすることは無いと思われ)。ちょっとコストは高くて200円~350円程度(耐圧などにより価格は変化)。
・セメント抵抗
メタルクラッド同様大電力に耐えられ、最低3個でアッテネータが構成できますが、構造も同様に中身は巻線抵抗なので高域が削られる可能性があります。恐らくこれも音質テストはしていないものの、こだわり過ぎなければ気にしないで良いと思われます。デメリットは耐圧がメタルクラッドよりは低めな事、メリットはコストで1つあたり50円程度から購入できるのが魅力。
・不燃性酸化金属皮膜抵抗
上記とは違い酸化金属皮膜は巻線抵抗ではなく酸化金属を蒸着させたものです。コチラは以前のアッテネータ制作シリーズで使用したもの。最も安価ですが、耐圧が3Wまでなのでパラレルシリアル接続を駆使して耐圧を高める必要があります。結果的にはコスト上あまり変わらないかと思いますが、制作シリーズでは音質を考慮し本抵抗を使いました(ただしメタルクラッド等と比較はしていませんので実力は不明です)。コストは20円程度から。
画像はすべて秋月電子通商のHPから引用。ネット販売もやってますので地方の方も便利!。
なお、アッテネータはシリアル接続が可能で、例題の10Wアンプの10dBアッテネータに更に3dBのアッテネータを追加すると出力を0.5Wまで落とすことも可能です。計算は簡単、それぞれの減衰量を足すだけです。
例:定格出力10Wのアンプにアッテネータ(ATT)をシリアル接続した時の計算。
ATT10dB = 10Log( 1 / 10 ) = 単体接続で1Wに変換
ATT3dB = 10Log( 1 / 2 ) = 単体接続で5Wに変換
減衰量10dBと3dBを足して13dB
ATT13dB = 10Log( 0.5 / 10 ) = 直列接続で0.5Wに変換
じゃ、今週はこのへんで。