cuLo MOD Studio!

ギター、エフェクター、電子回路をつらつらと。

ドロッパ安定化電源の修理。

  会社で要らなくなった、というか壊れた約20年前の電源を2台も譲ってもらいました。この二つの電源はドデカいトランスを搭載したドロッパタイプの電源で、購入すると最低でも福沢諭吉5人は必要な高級電源なのですが、修理できれば手持ちのスイッチング電源よりはるかにきれいな電源を確保できることになります。しかも大容量で2台…。ということはプラスマイナス電源も思いのまま!!!。

 

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kenwood PR18-1.2Aの症状

まず一台目、出力電圧が安定しない。記録していなかったが確か25Vくらいの出力電圧があった。というか波形がイカれている。この波形ではまともに電子部品を動作させることが出来ないというか壊れると予想。

 

・PR18-1.2Aの調査

まず疑ったのはコンデンサの容量抜けでした。大体電子機器の調子が悪くなるのは電解コンデンサだと相場が決まっているのだ。あと波形から100Hz間隔のノコギリ波であることから、やはり電解コンデンサの容量抜けであろうと推測。制御系回路の電源ライン上もノコギリ波状だったのでこれも電解コンデンサだろうと要因づける決め手でした。

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電解コンデンサを全部新品に交換。

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結果。違いました。

なので、各部のコネクタで接続されている回路を分断することにより原因箇所を特定しようかと出力用の大電流用トランジスタのコネクタを外すとノコギリ波がなくなるのを発見、制御部の電源ラインも通常通りっぽいのでおそらくこのトランジスタが関係しているはず!。(しかし普通トランジスタが壊れるとCE間ショート等だと思うのでこのような動作にはならないと思いつつ)とりあえず手持ちの大電流用トランジスタをつないでみると…。

 

 

 

 

違いました。普通に出力からノコギリ波が出ます。

 

またかよ!。

更に幾つかのコネクタを確認すると5pinのコネクタを外すと症状が治まる。じゃあこの5pinのコネクタはどこに行っているのかを調べると電源本体の出力端子に向かっている。で、出力直前にも基板があり、コンデンサが実装されているので「これでは?」と思い出力基板を外してみたところ…。

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汚い。何があってこうなったのか…。腐食?。真鍮ブラシで磨いて黒くなったところを出来るだけ落として光で透かして見ると、本来銅箔パターンで接続されている場所が腐食?によって高抵抗~オープン状態になっているようだ。(写真は撮れなかった)

 

・PR18-1.2Aの原因と対処

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比較的綺麗にした基板に0.8Φの銅線を半田メッキして取付、出力波形が正常になったので、これにて対処終了。現状これ以上綺麗にならないので写真は酷く汚く見えるが結構正常です。原因は出力基板の腐食?によるオープンと思われる。マイナス側がどこにも接続されていない状態だった。しかしなぜ黒く腐食したようになっているかは謎。

 

kenwood PR18-3Aの症状。

こちらは一見まともに動作しているが、出力電圧が不安定になるという情報から、まずはオシロスコープでその波形を観測する方針に。

 

電圧はしっかり直流の電圧になっているようだが、電圧可変ボリュームを回すと出力電圧が1V位暴れるように見える。さらに10V付近で電圧可変ボリュームを触っていないのに電圧が1V位に揺れるという現象。制御基板の各所を見ても「特に…」という状態、ここから推測される仮説は2つあって、1つはやっぱし電解コンデンサなのだけど、今回の症状から制御系の比較的小さな電解コンデンサだろうと推測。もう1つの仮説が電圧可変のボリュームのガリ

 

・PR18-3Aの対処

コンデンサ交換は数が多いので一旦後回し、まずはボリュームの交換に踏み切ることに。大型の高定格電力ボリュームだなと思いつつ取り外してみるとなんと2Wの定格電力タイプだった。手持ちにそんな定格のものはないので、思い切ってその辺のノーマルのボリュームをつけてみると(回路上、こんなところに大電力は流さないだろうと勝手に推測&最悪ボリュームが焼けるだけと算段)、見事ボリューム可変中の暴れと、10V付近の電圧揺れが納まった。

 

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案の定電流はほぼ流れていない。

 

・PR18-3Aの原因と対策

つまるところボリュームにガリが発生していたのが原因。ボリュームを交換することにより対処終了予定(注文した抵抗が届かない)。ガリは経年変化なので対処は修理しかない。仕方なし。

 

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・まとめ

直流安定化電源の故障って大体は電解コンデンサと言われる気がするんですが、今回はどちらも違い原因究明に苦労しました。最初の頃はすべての回路図を起こしてやろうと思ってたものの、特に1台目の電源は仕事の方も多忙を極めた状態での修理だったのでトータル1か月前後は放置しつつ(さらにチビ助のリード部品の押し込みによるランド剥離)、最終的に回路図起こしは諦め、言い方は悪いが原因と思しき箇所をとっかえひっかえする方式に方針変更し解決。でも結果としてこれで良かったんだと思います。何故かというと、cuLoは電源修理するのが目的ではなく、エフェクターを造るのが目的であってそこに電源が必要というだけで、電源の回路をあれこれ詳細に調べる必要はないかなーと。そういう事であれば今回の電源修理は「修理してみた!治った!よし!」という大変雑な修理になりましたが個人的には満足です(実質福沢諭吉10人分だし)

 

・関係ないけどあとがき的な

 さて、コロナ禍の自粛の大変な時期ですね。まずは外出を控え出来るだけ家の中にいましょう。外に出る必要がある場合は3密「集・近・閉」(笑)を避けましょう。そんな中でも物流インフラとか役人とか医療関係者とか、そう簡単に休めない人達が文字通り命を賭けて戦っています。インフラには当たらないかもしれないが、コンビニやスーパー、レストランだって完全休業したら結構困ります。そうやって今を維持してくれている人に感謝しつつ、休める人は休むという戦いをする。旧来の一所懸命の意味がピッタシかと思います。今後の補償とかは今の所判りませんが、世のニュースでは「全然ない」と報道してますが、厚生労働省のHPを見ると、全然ないってことはありません。むしろ思ったより補償ある感。例えば事業者向けですが新型コロナ休暇支援|厚生労働省とか、まだまだ追加の措置を考えているようです。政治家と官僚も一般人と違う方法で戦っているのです(そして彼らも人間であることを強く言いたい)。人づての情報は正確ではないので確実なソースから自分で取捨選択。これは現在大変重要な事です。子供の頃は「テレビ(新聞)で間違っていることを言うはずがない」と思ってましたが、無知か故意かは知りませんが間違っている事もちらほら。報道機関でこのレベルです。情報の取り扱いには気を付けましょう。あなたがデマの発信源にならないように。とにかく今はコロナには負けない。コロナを移されない移さないように皆さんお気をつけて。そして運悪くコロナに感染してしまった方の一刻も早い回復を祈ります。 

 

・備忘録

 今後、同様の現象に遭遇した人の為、自分が忘れた時の為に現象についてのメモ。

・PR18-1.2Aの現象

・ノコギリ波は正しくは上昇は急伸な立ち上がり、下りは微分したような波形。

・電圧可変には反応した。一応それっぽい電圧にはなるが直流にノコギリ波はそのまま乗ったように出力。

・最終的にノコギリ波の周期は電源の50Hz周期に同期していなかった。たまたま電源リップルとノコギリ波が同時に観測できる場所で気付く。

・ノコギリ波の周期は負荷を掛けると早くなっていく。

・ノコギリ波が出ている状態だと制御回路のほぼどこでもノコギリ波が観測された。

・制御用電源ラインはマイナス側もノコギリ波が観測された。

・PR18-3Aの現象

・ボリュームを回すと出力電力は暴れる、は主に上側に暴れることがほとんど、例えば1V~2Vに可変中のリニアな線に対して上側に電圧が暴れる。ガリの場合散発的に抵抗値が上がったように見えるのでこれは大きなヒント。

・10Vで揺れるのは正しくは4V付近でも起きた。

・10秒程度置くと電圧は落ち着く。多分個体差あり。

・ボリュームのガリが起きている箇所は定常時の揺れも起きやすい可能性。

・リレーの切り替わり付近で起きた(偶然かも)

 

 

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