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真空管ギターアンプ「FENDER CHAMP」のクローン的なものを自作する。3本目~動作説明編~

 荒れてますね世界。

 

前回の記事

culo.hatenablog.com

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 今回は全体的な動作についての説明。今回は電源スイッチや、ジャックを差し込んだ時の動作についてメインに説明していく。

 ・回路全体

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・電源部

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 電源部は真空管用の昇圧電源トランスが入っていて、AC100Vを入力すると正相AC280Vと逆相AC280Vを出力する。これを整流管5AR4で全波整流する事で約DC380V程度の直流電源が得られる、実際には整流後のDCにも、ACに起因するリップル成分が乗っているので、コンデンサを配置してリップル除去を行う。このコンデンサは大きすぎると整流管を破壊する恐れが有るので、データシートに書いてあるアブソリュートの容量を良く確認してから選定する必要あり。ちなみに今回使用した5AR4は60uFと記載があった。今400u位に変更しているので大変ヤバイ。

回路の動作も見ていく。まず図の左側からはAC100Vが入って電源トランスへ。AとBの連動スイッチが入ると機器に100Vが印加される。スイッチが入ればトランスの右側ではまずはヒーター回路が作動し、真空管を温める。その後増幅部の電源スイッチであるCとDを入れ全体が動作できるようにする。これを実現するには幾つかの方法がある。

1.単純にスイッチを2つ設ける。

 文字通り実際に操作するスイッチを2つ用意する事でヒーター電源用スイッチと増幅部電源スイッチを時間差で操作できる。そのへんに転がっているスイッチで簡単に制作できてしかも安価。Marshallの真空管アンプもパワーオンとスタンバイの2種類のスイッチが付いている。いつもどっちが先だっけ?と迷う。

2.リレーとタイマーとスイッチを組み合わせて使う。

 スイッチ操作で電源投入しヒーターとタイマーを動作させ一定時間後勝手に増幅部に電源が入るタイプ。設計するにはリレーの知識が必要になり「1」よりは複雑になるが、一度電源を入れれば自動でスタンバイ状態まで持っていってくれる。時間もきっちり図って電源投入するので真空管を傷めにくく便利な反面、ここに並んだ方法の中では一番費用がかかる。

3.ON-ON-ONの4極双投スイッチを使う。

 基本的な構造は1と同じ回路になるが、スイッチ自体は一つで済むため、「1」の場合に起こりえる電源投入順序を間違うことがない。今回はこれを採用している。スイッチ自体が若干レアで高価ぎみ。

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 左図がon-on-onの4極双投スイッチの接続イメージ。まずは一番上の状態の説明で中段と下段の色が同じところが接続される。次に真ん中の図は一部の接続(図では緑と紫)が中段と上段の接続に代わる。最後に一番下だが、説明は不要だろう。すべての接続が中上段に移行する。以前書いた

モッキンバードSTのピックアップ配線を変更しました。 - cuLo MOD Studio! でもこのスイッチの2極を使用している。このタイプのスイッチがある事でシリーズハム、パラレルハム、コイルタップの三種の接続方法をスイッチ一つで変える事が出来るようになった。

 

・プリ増幅部

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 まんま増幅部。どこからどう見ても増幅部で、びっくりするほど只の増幅部。ギターアンプ最初期の回路と言っても実はオーディオと大きな差はない。確かに只の増幅部にしか見えない。オーディオとの違いが有るとすればカップリングコンデンサが0.022uFと比較的小さいことだろう。しかしギターアンプでは普通の事のようだ。知らんけど。12AX7という大変メジャーな真空管で入力信号を二回増幅する。二つの真空管を使っているように見えるが12AX7一つの管の中に二つの増幅素子が入っているので、管としては一本用意するだけで済む。

 

・メイン増幅部

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  プリ増幅部で増幅された信号を電流を伴うもの、つまり電力を伴うものにする。ソリッドステートのフォロワ出力の場合はこの部分では基本的に電流しか増幅しないが、トランス出力の場合電圧も増幅する。この部分が無いと電圧だけ大きい信号で電流が伴わずスピーカーを鳴らす事ができない(申し訳程度には鳴るかも)。単純にこの部分では出力トランスを負荷として電流を増幅する。パワー管と言ってもやはり真空管はアンペアクラスの電流は流せないようでトランス出力を使う。トランス出力を使う事によって真空管には7kΩの負荷が有るように見せることができ、これによって増幅作用を得ることができる。ソリッドステートアンプと違ってトランス出力の場合はパワー菅でも電圧増幅をする。

 

・出力端子部

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ラインアウト

 今回増設した部分。ラインアウトは常時出力で電力を落としてハイインピーダンスで出力されている。他のアンプや、エフェクターに接続しても良いし、オーディオインターフェイスにもこの端子から送出できるようにした。出力源をヘッドフォンアウトと共用している。モノラル出力。

 

・ヘッドフォンアウト

 本来のフェンダーチャンプには無い機能としてヘッドフォンを直接鳴らす機能を追加した。出力自体はラインアウトと共用しているが、インピーダンスはヘッドフォン側に合わせてある。またLRの両方を鳴らす必要が有るため並列接続している。さらに、ヘッドフォンを差し込むとスピーカー出力が無くなり内部のダミー抵抗に電力が掛かるように設計した。これによってヘッドフォンを差し込むとヘッドフォンとラインアウトだけが鳴るため、音量を気にせず鳴らせる。

 

・アッテネータ10dB切り替えスイッチ

 これも本家フェンダーには無い機能。インピーダンスを保ちながら電力だけを10dB落とす回路とスイッチを追加した。以前も書いたが5Wの音量は大変うるさいので、500mW程度なら大丈夫だろうという算段である。実際にはそれでもなお最大ゲインには出来なかったが・・・・。

 

 ・出力端子の接続/未接続による動作。

 まずラインアウトについては前述の通り常時出力しているので、ラインアウト端子にジャックがついていればどのタイミングでも信号を吐き出す。ヘッドフォンアウトについても実は常時出力しているが、未接続の場合はハイインピーダンスになっている。出力トランスから見た場合はメインのスピーカーやダミーの方が重い負荷となっているので、これは問題にならない。スピーカー出力が未接続の場合、出力はダミーに送られる。スピーカー出力がスピーカーに接続された場合はスピーカーが負荷となる。スピーカー出力があってもなくてもヘッドフォンが接続された場合はスピーカー出力はダミーに送られる。

 

今回はこんなとこで。次回は増幅部の計算等をやる予定です。

 

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